粟島の暮らし、島の命とともに作品づくりを|瀬戸内国際芸術祭2022
香川県三豊市の話題をお届けするプログラム「週刊みとよほんまモンRadio!」今回のゲストは瀬戸内国際芸術祭2022秋会期の会場となる粟島で、現在作品を制作中!書家・アーティストとして活動されている森ナナさんです。
森ナナさんは1990年、福岡県ご出身。書家のご家庭に生まれ、幼少期より書に親しまれてきました。2016年に東京藝術大学大学院美術研究科 先端芸術表現専攻修了。つい先ごろ、個展「瞬間」を京都府、PURPLEで開催されたばかり。
今回はそんな森ナナさんの制作への想いもお伺いしたいと思います!
まず、書家さんとしてご紹介いたしましたが・・・
森ナナさん 自分としては、いち人間として制作活動に取り組んで生きてると感じているので・・・“書家・アーティスト”と周りの方からは言っていただきますが、ただ人間だな、といった感覚で活動しています。
粟島芸術家村での制作
粟島では、どのような活動をされているのでしょうか。
森ナナさん 現在は、墨を作る工程の段階です。膠(にかわ)と煤(すす)が主な墨の原料なのですが、膠はイノシシの皮、煤は竹から抽出して作っています。
粟島に入って、何ができるのか、2か月程リサーチしていたのですが、ある日イノシシの駆除に行くというお父さん方に同行したんです。
そこで皮を剥いで、お肉はいただいて・・・といった作業を見学して、「この皮で膠が作れるかもしれない」と思い、島のお父さん・お母さんにも相談しながら、毎日試行錯誤して・・・生きてることを体感しながら制作しています。
イノシシのお肉もいただきながら活動していますね。
制作を通じて、島の人々・島の命とつながる
粟島には元々いなかったイノシシ。海を泳いで渡ってきて、作物を荒らすなど、粟島のみならず、他の地域でも問題になっています。このイノシシに、作品のテーマのひとつとして向き合っていらっしゃるとは・・・。
害獣として、私たちは怖い、と感じたり、敬遠してしまうように思いますが、森ナナさんはお話を伺っているとむしろ逆で、どんどん近づいてる、という印象です。
猟に同行した際も、目がかわいい!と感じて近寄っていって、近づきすぎ!とお父さんたちに心配されてしまうほどだったとか。
ところで、墨を作るという作業についても、教えていただきたいのですが。
森ナナさん 膠は定着材・接着剤のような役割で、煤と混ぜることで、紙に定着する、という役割を果たします。膠がないと、乾燥した後、紙から色の原料がぽろぽろと剥がれてしまったりします。
もともとは皮を煮ると書いて「煮皮(にかわ)」で、文字通り動物の皮や骨を煮て作ります。鹿や牛などがよく使われ、イノシシの皮を使っている人はそんなにいないんじゃないかと思いますね。私も初めての試みで、「これでいいのかな?」と島の方たちと相談しながら、毎日手探りで作業しています。
作業されてみていかがですか。
森ナナさん 煤も一日に少ししかとれません。竹を燻ぶらせて、煤を
ちょっとずつ削ってとる、という結構原始的な方法で行っていて。
でも島の方と力を合わせて、人間同士が一体になって作品を作っていっている、というのが大切だと感じます。
成果物だけじゃなく、そこの過程も同じくらい大切です。
筆へのこだわりもありますか?
森ナナさん 筆については、イノシシのたてがみの部分、いつもは毛も切り落として自然に還すものなのですが、それを全部もらって乾燥させて保管しているところです。
結構固いので、薄い和紙だと破れてしまうかもしれませんが・・・
島民と一体になって進めている制作、力強いものを感じますね。
「書く」という作業はいつからされるんですか?
森ナナさん そろそろ、墨を作りながら取り掛かりたいですね。ただ、書くというよりは、島の方々の姿をうつす作品になっていきます。
「うつす」・・・大事なキーワードのようですね。どんな作品か気になります!
森ナナさん ぜひ、観にきてください!
お話を伺って、ますます作品が楽しみになりました。
瀬戸内国際芸術祭2022秋会期は2022年9月29日(木)開幕です!
待ち遠しいですね。
最後に改めて、ラジオをお聞きの皆さんにメッセージをいただきました。
森ナナさん 初めて瀬戸内に来て、粟島も初めてで。何も持たず調べずに来て、ここから何ができるんだろう、と一からずっと島を観察して、島の方々と話して、その過程で出来上がっていっている作品です。
実際に粟島に来て、見ていただけたらと思います。
制作真っ最中のお忙しい中、ご出演ありがとうございました!
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粟島芸術家村
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