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三豊の自然と原風景の思い出(環境省国立公園課長・則久雅司さんに聴く)

 日本を代表するすぐれた自然の風景地が指定される「国立公園」。三豊市も含まれる瀬戸内海国立公園は、昭和9(1934)年に日本で最初に指定された3箇所の国立公園の一つです(残る2つは雲仙と霧島)。

 現在、日本には34の国立公園が指定されていますが、その国立公園行政を管轄する環境省国立公園課の則久雅司課長は三豊市詫間町のご出身です。先日、三豊市に帰省された折にお話を伺いました(お話を伺ったのは2023年5月2日です)。

- 三豊市詫間町のご出身でいらっしゃるんですね。
則久 はい、詫間町の生まれで詫間小学校に通っていました。

環境省国立公園課長・則久雅司さん(三豊市詫間町出身)

-当時の三豊市の自然や風景に関する思い出はなにかありますか?
則久 当時の詫間町の山々は今に比べるとかなり木が少なくて松などがまばらに生えていて真砂土がむき出しになった、いわゆる「はげ山」が多かったと思います。
 また、近くの高尾木山(たこぎやま)は埋立用の土取場の跡地が三角形に見える大きな裸地になっていて、それが原風景の一つでもあり、子供たちの冒険の場でもあったのですが、今では鬱蒼とした森に覆われていますよね。自然の回復力は本当にすごい。
 それと松がなくなった。今は松食い虫などの影響もあって山から松の木はほとんどなくなり、広葉樹が増え、春には山桜のピンクの花が目立つようになりましたね。

- 木がほとんどなかったのは、かつて盛んだった塩田の影響(塩を炊くために木々を燃料とした)もあったのでしょうね。
則久 そうなのかもしれませんね。当時すでに使われていませんでしたが、小学校のすぐ裏には流下式枝条架塩田(*1)の施設がずらっと並んでいたのが原風景の記憶として残っています。
 その他にも小学生か中学生のときに、亡き父に連れて行ってもらった詫間海軍航空隊の滑走台(*2)も心に残っている風景です。滑走台の先端で、海藻の中にいる小さなワタリガニを見つめながら特攻隊の話を聞いたのは今でも印象に残っています。

詫間海軍航空隊の滑走台跡(則久さん撮影)

- 地元の方により知ってもらいたい三豊の自然や景観についてはなにかありますか?
則久 瀬戸内海といえば多島海の景観美が最大の特徴です。すべての地域を見たわけではありませんが、紫雲出山から見る多島海景観は、瀬戸内海国立公園の中でも随一の景観美と言っていいと思います。というのも紫雲出山から見下ろす角度そして島々の大きさがちょうどよいため本当に美しく感じるのだと思います。
 紫雲出山はもっと演出を施して感動的な景観美のある場所としてPRしていってよいと思います。

紫雲出山より瀬戸内海の多島美(則久さん撮影)

- 最近の三豊についてどう感じられていますか?
則久 すごく元気になっているなと感じます。日本の中でも地方創生の成功事例としては屈指の地域ではないでしょうか。若い方々を始めとして頑張っている人を応援する雰囲気も強く感じられますね。
 宿泊施設もとても増えましたが景観などに配慮していただいてるのがいいなと思います。連休中にはそんな三豊の各地の様子を見て廻ってきたいと思っています。

- お忙しい中、本日は誠にありがとうございました。

■則久雅司さんプロフィール
1967年 香川県三豊市詫間町生まれ
1992年 東京大学大学院修了(農学系研究科林学専攻)
1992年 環境庁(当時)入庁(自然保護局国立公園課)
以後、大山隠岐国立公園、足摺宇和海国立公園、釧路自然環境事務所のパークレンジャーを担当したほか、本省国立公園課、野生生物課、鹿児島県自然保護課長、環境省動物愛護管理室長などを歴任し、2022年7月より環境省国立公園課長。

(*1)流下式枝条架塩田
 昭和20年頃より、それまで行われていた入浜式塩田に変わって、竹の枝を組んだ「枝条架(しじょうか)」の上から海水を滴下させ、風力によって蒸発させて、かん水を採り塩を作った塩田。

【参考】流下式塩田(赤穂市立海洋科学館・塩の国・復元したもの)photoACより

(*2)詫間海軍航空隊滑走台
「詫間海軍航空隊滑走台は、旧海軍水上機基地としての特徴をよく示す滑走台が良好な状態で現存する、全国的にも希有な事例である」として土木学会により2006年に土木学会選奨土木遺産として認定されている。
https://committees.jsce.or.jp/heritage/node/476


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